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旅のエッセー
ツアーな人々
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ギネスものの女性

 オーストラリアのツアーでは過去38年間で193カ国を回ったという女性がいてびっくり。現在日本が国として承認しているのは190カ国でこれに台湾、北朝鮮と日本を加えれば193カ国になるからその全部を回ったことになる。民間の旅行会社でツアーを企画しているのはその半数ぐらいだろうから、残りは全部自前で回ったことになる。入国手続きをとるだけでも大変な苦労が伴ったことだろう。アフリカの小国では旅行中に内戦が勃発してかなりきわどい目にもあってきたとのこと。

 ナポレオンが幽閉されたセントヘレナ島にも行ってきたという。私はてっきりフランスに近い孤島かと思っていたら、なんと南大西洋上にあり南アフリカ大陸と南米のちょうど中間あたり。現在はイギリス領で軍隊が管理しているそうで、許可を取り付けるのが並大抵の苦労ではなかったとか。

  ちょっとギネスものではなかろうか。見たところきりりとしたところはあるが、ごく普通の中年女性で英語もあまり得意ではないと言う。日本にいる時間より海外にいる時間の方が長く、旅行に費やした費用は1億円をくだらないとのこと。現在はいろんな国の大きな島を巡っていて、今回の旅はタスマニア島に行くのが目的だったとか。単に旅行好きを超え、人生をかけた執念といえよう。
  私も旅行の回数は多い方と思っていたが、足元にも及ばない。大いに刺激を受けた。

どこに行っても日本人

  タスマニア島唯一の大都市であるホバートでウオッチングしていたときのことだ。歩き回っていたら方向感覚を失い、自分が地図上のどの辺にいるのかさっぱり分からなくなってしまった。後で知ったことだが、宿泊ホテルに向かうつもりが90度違う方向に歩いていた。広い車道沿いの歩道で、まったく人影がない。途方にくれていたら、横断歩道の向こう側から二人連れのアジア人の若者が歩いてくる。これ幸い、「エクスキューズミー フェア リズ ヒア」と地図を示しながら尋ねたら、怪訝そうに「日本の方ですか」と言うではないか。二人とも浅黒く、一人は口ひげを生やしているし、ラフなスタイルをしているので分からなかったが、日本人だったのだ。ほっとすると同時に、日本人相手に下手な英語を披露した自分の間抜けぶりに苦笑した。この近くでホームステイをしている学生だったのだ。

  最近、オーストラリアはアメリカに次いでホームステイ先として人気がある。それらの学生を含め、この国を訪れる外国人のうちの20%、5人に一人は日本人とのこと。この数字は驚異的だ。オーストラリアに限らず、いまや世界中どこに行っても日本人観光客であふれている。うかうか歩いていて、いつの間にかほかの日本人の団体に紛れ込んでいたという経験もある。たまに日本人のまったくいない観光地に行くとほっとするくらいだ。

  欧米では見知らぬ人同士でも気軽に挨拶を交わす。ホテルの廊下やロビーでお互いにっこりと「グッドモーニング」とか「ハロー」とごく自然に言い合っている。郷に入っては郷に従うでわれわれもその習慣になじむが、実に気持ちがいい。でも、日本人同士だと途端にぎこちなくなり、お互いを無視して通り過ぎることになる。海外だからこそ日本人同士親しくしなければならないのに逆なのだ。もっとも、日本ですれ違う人にニコニコしたらちょっとおかしいのではないかと思われかねない。それどころか相手が女性の場合、気があるのかしらと誤解されかねない。悲しいかな、そんな習慣が身についてしまっているからなのだろう。日本人ももっと欧米のよき習慣を見習う必要がありそうだ。

  現在、世界でもっとも海外旅行をしているのは日本人ではなかろうか。それだけ日本の経済力が豊かであることも事実だが、日本人ほど好奇心の旺盛な民族はないからだろう。しかも、宗教的偏見も、食に対する偏見もない。どこに行っても適応できるし、そこから学び取ろうとする。この抜群の対応力が明治維新において、長く鎖国していた日本が急速に欧米諸国に追いつけた源泉だろう。
  世界の国々を訪れその国の実情を知り、交友を深めることは国と国との融和につながり世界平和に貢献する。旅行者は見方を変えれば民間レベルの親善使節ともいえるのではなかろうか。日本が稼ぎ出した貿易収支の黒字を広く世界に還元することにもつながり、海外ツアーがこれからも盛んになることを期待したい。

究極の旅

  私はこのエッセーを書き上げた後ニュージーランドに行ったが、そこで究極の海外旅行のかたちを見たように思った。
例によって年配者が多かったが、そのときのツアー同行者で珍しくかなりお年寄りの男性3人と食事のテーブルを囲むことになった。3人はともに79歳で同じ中学校を卒業した同窓生だったのだ。男性同士、しかもご老人のグループとは珍しい。私の旅行体験で初めてのことだ。皆さん実社会の灰汁が抜けたようにさわやかないい顔をしていらっしゃる。

 更に話を聴いたところ、同じ年代の女性3人とその連れ合い一人を含め、なんと合計7人のグループ参加だったのだ。男性陣は釜山の中学校を昭和9年に卒業していて、そのときの同窓生と近くの女学校の卒業生が合同同窓会をつくり、毎年旅行しているというのだ。昨年までは故郷の釜山や国内旅行だったが、今回は初めての遠出とのこと。いつもはもっと多くの参加者があり、今回も初めは倍近い人数の参加希望があったがいろいろの事情で減ってしまったとのこと。以前は70歳以上の参加者は旅行社から健康診断書の提出を求められたものだが、いまはそれはない。逆に団長の責任上、診断書の提出を条件としたら引っかかる者がぞろぞろ出て7人になってしまった。それにしても、その年で同窓会とは珍しい。みんな戦後内地に引き上げた苦しい体験を持つ人たちであり、ともに学んだ学校も敗戦でなくなったことから、よけい郷愁と仲間意識が強いのだろう。

 この人たちを含めて、参加者の高齢ぶりはかなりのものだ、珍しく夫婦での参加は2組のみ。女性の参加が圧倒的に多いのはいつものこと。一人身での参加が多いのはこの年代になれば男女の平均寿命の違いにおおいに関係してくる。夫婦のうちの片方が亡くなり、その比率は夫を亡くした女性が圧倒的に多いということだ。晴れて独身となり、夫の死亡保険金で財政豊かになった女性は更に元気を増して海外旅行に精を出す。今回の最高年齢はそんな女性でおん年81歳。太極拳に謡い、エトセトラで毎日が忙しくて仕方がないとおっしゃる。別の女性が友達同士社交ダンスのサークルをやっているが、男性が少なくて困っています。いかがですかと誘ってきたがとてもそんな気にはなれない。(もっとも、もっと若い女性のサークルなら考えてもいいが、その場合はお誘いがないだろう)

 まさに高齢化社会の縮図がツアーの実態に読み取れるではないか。

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